ルージュのキスは恋の始まり
 そのメールに " わかった " としか返事出来なかった。

 でも、今日こそ俺なりのけじめはつける。

「本日をもちまして私は社長を辞任致します。短い間でありましたが皆様には大変お世話になりました」

 俺の爆弾発言に会場が一瞬静まりかえる。

 だが、その数十秒後ざわめきが起こった。

 大河は俺を見据えている。

 フッと微笑しながら壇上を下りると歩が駆け寄ってきた。

「ちょっと、辞任てどういう事よ!私聞いてないわよ。副社長も顔真っ青よ!どうすんのよ!」

 歩が髪を振り乱しながら俺に食ってかかる。

「さあ、どうにかなるんじゃないか?」 

「さあって、他人事じゃないのよ!」 

「もう他人事だ」

 歩に向かって笑って見せると、俺はすたすたと歩いて会場を出る。
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