ルージュのキスは恋の始まり
「後ろにあんたのお迎え来てるよ」

 大河が彬の目の前でナイフをくるくる回すと、後からやって来た捜査官にそのナイフを手渡した。

「俺の甥か姪の父親、殺させるわけにはいかないんだよね」

 大河がチラリと俺に意味あり気な視線を向ける。

 甥か姪?

 一体何の話だ?

「お前なんかに龍神は渡さんぞ!」

 彬が俺に向かって声を荒げて叫び俺の腕をつかむ。

 そんな奴の腕を振り払い俺は言った。

「龍神なんて俺はいらない」

 今欲しいものはただ一つ。

 他には何もいらない。

 特捜部が彬の身柄を拘束して連れて行くと、大河が聞いてきた。

「じゃあ、玲王の欲しいものって何?」

「決まってるだろ、美優だ」

 俺が微笑すると、大河も俺の言葉を聞いて満足そうに笑う。
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