ルージュのキスは恋の始まり
「柄じゃない。これからはまた好き勝手やるさ」

「では、私も好き勝手やらせてもらいます。あなたが言ったんですからね。お前の人生を歩めと。あなたが龍神に戻るよう説得し続けますから。あなたの側にいると毎日が楽しいんですよ。あなたがてっぺんに立つのを私は見てみたい」

 笑って言う卓人のその瞳には一点の曇りもなかった。

「勝手に言ってろ」

 エントランスに向かう俺に向かって卓人が叫ぶ。

「わかってるでしょう?私は諦めが悪いんですよ」

「ただ執念深いだけだろ」 

 俺はニッと笑って呟くと、後ろ手に手を振りホテルの前に止まっていたタクシーに乗り込んだ。

 スマホを見て大河からのメールを確認しながら運転手に行き先を告げる。

「恵比寿まで頼む」
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