ルージュのキスは恋の始まり
 タクシーがマンションの前に止まると、俺はすぐに美優のいる部屋に向かった。

 玄関の前でインターホンを鳴らすか数秒迷ったが、結局鳴らさなかった。

 逃げられては困る。

 大河から受け取った鍵でそっと中に入る。

 玄関には美優の靴が置いてあった。

 だが、物音がしない。

 靴を脱いで廊下を真っ直ぐ進み、突き当たりのドアをゆっくり開ける。

 ここはどうやらリビングらしい。

「・・・・」

 ソファで美優が寝ていた。

 手には育児雑誌を持ったまま。

 まだ明るい時間に美優の顔をじっくり見るのは久しぶりだった。

 やっぱり・・・・痩せた。
< 333 / 391 >

この作品をシェア

pagetop