ルージュのキスは恋の始まり
 しっかり食べているのだろうか。

 美優の横に座って、彼女の頬に触れる。

「れ・・お・・」

 美優がそう呟いて頬に触れた手をつかみ、俺の方にすり寄ってきた。

 一瞬起きたのかと思ったが、どうやら寝ぼけてるらしい。

「お前って本当に手が好きなんだな」

 美優の身体をそっと抱き締める。

 やっと触れられた。

 もう悩まない。

 もう手放す気もない。

 これは、俺の一番大事なものだ。

 全てを捨てても、美優だけは渡せない。

 耳にかかった美優の髪を優しくかき上げると、俺は彼女の耳元で囁いた。

「愛してる」
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