ルージュのキスは恋の始まり
「社長と打合せとかで事務所に戻りました。それより、聞いて下さい。今日は大河さんドラマの撮影でキスシーンあったんですけど、相手役の女の子がわざとNG連発して監督が激怒して今日はキスシーンなくなったんですよ」
 
 百合ちゃんが口を尖らせる。

 大河が彼女の言葉を補足してにっこり笑う。

「相手役の子もごねちゃって、今日の撮影は中止。久々に美優と一緒に夕飯食べられるよ」

「・・・キスシーン」

 あの龍神社長とのキスがまた甦る。

 何故ここでキスの話題なんか出るの。

 もう思い出したくなんかないのに・・・・。

 思わず唇に触れると、大河が怪訝に思って聞いてきた。

「美優、どうしたの?」

「・・・え?ううん、何でもない。今日は最悪の日だったの」

「最悪って何があったの?」
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