ルージュのキスは恋の始まり
「俺様なうちの社長が打合せに同席したんだけど・・・私の事を散々貶したのよ。思い出しただけでもムカつく」

「どうして?美優が仕事で手抜きした訳じゃないでしょ?」

 聞き上手の大河が私を促す。

「化粧しないで打合せに参加した私をコケにしたの」

「う〜ん、社長の言い分もわかるけど。社会人だし、こういう業界にいるんだからメイクすべきじゃない?女優だって、公の場ですっぴんだったらみんな変に思うよ。俺だって撮影の時はちょくちょくメイクされるしね。夢を売る商売なんだからさ」

「それだけじゃないの!」

 大河があの最低男の肩を持つので、思わず反論する。

 だが、失言だった。

「あっ・・・・」

 慌てて口を押さえたが、出てしまった言葉は取り消せない。

「それだけじゃないのって他に何があったのかな、美優?」

 ニヤリと笑って大河が私の目を覗き込んでくる。

「何でもない!」

 私はむきになって否定する。
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