ルージュのキスは恋の始まり
「美優、何があったか言ってごらん。その社長さんと」

 優しい口調で大河が聞いてくる。

「・・・・」

「美優の口から男の話が出てくるなんて珍しいよ」

「・・・・口紅塗られて、キスされたの。口紅の出来を試すために」

 私は仕方なく告白する。

 すると、大河はヒューと口笛を鳴らした。

「やるじゃないか、その社長」

「誉めないでよ、私は怒ってるんだから」

「美優、もういい加減殻から出ようよ。普通におしゃれして、普通に恋して。もっと人生楽しまなきゃ」

「・・・大河には迷惑かけてばっかりでごめんね。でもね、誰かが傷つくのは嫌だし、自分ももう傷つきたくないの」

「迷惑なんかじゃないよ。今夜は美優特製の餃子作ってよ。あっ、ニンニクたっぷりね」

 大河が私の頭をよしよしと撫でる。
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