ルージュのキスは恋の始まり
「何でニンニクたっぷり?」

「明日、俺の口がニンニク臭ければ、相手役の子もそう何度もキスシーンのリテイクしないでしょ?降板はしたくないだろうしね。美優も毎日餃子食べてれば、その社長さんからもうキスされないんじゃないかな?」

 大河の目が悪戯っぽく笑う。

 弟は身内の私には激甘だけど、よそでは結構腹黒い。

 まあ、そうでなきゃあの世界ではやっていけない。

「私も大河みたいに強なれたらいいのに」

「姉さんは強いよ。母さんが亡くなってからずっと俺を守ってくれただろ?」

 大河が真剣な表情で私を見つめる。

 姉さんと呼ぶ時は彼が真面目モードになる時だけだ。

「大丈夫、姉さんは弱くない。弱くない」

「・・・・」

 大河が呪文のようにゆっくり言うけど、私の心はずっと凍ったままだ。
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