ルージュのキスは恋の始まり
「お母さん、お客さんいるの」

「あら、えーと、あなたは亜紀の彼氏かしら?」

「はじめまして。亜紀さんとは結婚を前提にお付き合いさせて頂いてます」

「え?ちょっと、何を勝手に」

「あらあ、亜紀ったら何も言わないのよ。何もないんだけど、上がってお茶でもいかが」

「では、遠慮なく」

 井上君の口角が上がる。

 結婚前提って何考えてるのよ。

 父は井上君の登場にかなり引いていたけど、彼の実家の話題になると、急に優しい顔になった。

「父は製薬会社の社長をしているのですが、井上製薬ってご存知ですか?」

 井上製薬って日本でも1、2を争う製薬会社で私が内定もらったとこじゃない。

優良物件って言ってた意味がやっとわかった。
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