ルージュのキスは恋の始まり
「いずれは僕も父の跡を継ぐつもりです。花嫁を連れてね」

 井上君が私の手をつかんでにっこり微笑む。

 なんかお父さんもニコニコしちゃってすっかり懐柔されてるし、外堀埋められてない?

 それから、何故か井上君はうちにお泊まりすることになり、私の部屋にいる。

「ねえ、結婚前提ってどういうこと?うちの両親すっかりその気なんだけど」

「その気になってもらわないと、そのうち亜紀を嫁にもらうから」

「でも・・私達付き合ってもいないし、井上君の事好きだとも言ってないよ」

「一目惚れだったんだ。井上製薬の最終面接。俺もいたんだよ。うちに入社すると思ってたのに、内定蹴ってアンジュに行くなんて。亜紀を追ってアンジュに入ったけど、いい勉強になったよ」

「でも・・・・それで結婚まで考える?」

「ずっと側で亜紀を見てきたけど、やっぱり亜紀が欲しいんだ。すっぴんの亜紀も可愛くていいね」

 井上君が私の頬に手を添え、そっと口づける。
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