ルージュのキスは恋の始まり
 でも、その唇はすぐに離れてちょっと寂しくなった。

「抵抗しないんだ?もっとして欲しい?」

「・・・何でそんな意地悪言うの?」

「亜紀の反応が可愛いから。俺は亜紀の事好きだよ。亜紀は?」

 井上君が私の瞳を見つめてくる。

「・・・頭の中が混乱しててよくわからない」

 それは今の正直な気持ち。

「もっと本当の俺を知って。でも、次の新作口紅が完成するまでには必ず好きって言わせるから」

 そう言って妖しく笑うと、井上君は私の首につけたキスマークをペロリと舐める。

 すると、ピクンと私の身体が跳ねた。

「ちょっと、ダメ。ここ実家なんだから」

「実家じゃなきゃいいんだ?でも、亜紀は刺激的なの好きでしょう?」
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