ルージュのキスは恋の始まり

「大河、ダメ！自分の立場忘れたの！」

　私の言葉で大河が思い止まると、男はその隙に逃げ出した。

「おい、待て！」

　大河が慌てて追いかけようとしたが、私は弟の腕に泣きながらしがみつく。

「お願い。行かないで」

「美優・・・・」

　私の姿を見て大河はその瞳を陰らせる。

　パジャマのボタンがボタンが外され、下着も見えていて・・・・私はその事に羞恥を感じる余裕がないほどあの男の暴挙に怯えていた。

　でも、大河は何も言わなかった。

　大河は躊躇いがちに私のパジャマのボタンに触れると、丁寧にボタンを閉めていく。

　そして、私の涙を拭うと、ぎゅっと私を抱き締めた。

「美優の体調が心配で今日はこっちに帰って来たけど、もっと早く戻って来れば良かった。美優、ごめん」

「ううん」