ルージュのキスは恋の始まり
 あの男は捕まっていない。

 警察に相談してもまともに話は聞いてくれなかった。

 男は今も野放し状態。

 この事件で私が失ったものは、大きい。

 でも、忘れてはいけない。

 悪夢はまだ終わってはいないのだ。

 きっとあの龍神社長のキスのショックで、こんな夢を見たのだろう。

 私はいつまでこんな生活を続けるの?

 ずっと弟のお荷物で良いの?

 大河だって自分の生活がある。

 一生弟に面倒はかけられない。

「大丈夫、ちょっと夢見が悪かっただけよ。大河は心配し過ぎ。じゃあ、行って来ます」

 私は気丈に笑って見せるが、大河は疑いの眼差しでじっと私を見ている。

「美優の大丈夫は信用出来ないんだよね」

「酷いなあ、もう。少しは信用してよ」
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