ルージュのキスは恋の始まり
「美優先輩、本当なんですか?さっき部長が来て、先輩は今日から宣伝部に異動だって言ってて・・・・」

「・・・・」

 亜紀ちゃんの言葉に唖然とする。

 あの悪魔、本当に異動させるの?

 ただの気まぐれで?

 拒否権がないのが悔しくて、拳をぎゅっと握り締める。

 あの最低男、グーで殴ればよかった。

「橘先輩、部長から言伝で早く荷物を整理して宣伝部に行くようにって。すぐ戻って来ますよね?」

 井上君も実験中だったのに、私を心配して入口まで来てくれたらしい。

 彼の左手にはビーカーが握られている。

「うん。こんな異動納得出来ないもの。だから、私の荷物はこのまま置いておくね。井上君、私が戻るまで亜紀ちゃんお願い。何かあれば連絡してね」

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