ルージュのキスは恋の始まり
「え?」

 宣伝部の人と争う気なんてこれっぽっちもないんだけど。

 反論しようとするが、突然亜紀ちゃんが泣き出して、井上君には目で行ってくださいと合図され、あれよあれよという間に研究所を追い出された。

「・・・・」

 問題はこれからだ。

 どうやって、本社まで行けばいい?

 私はこの3年間、1人で出歩いた事がない。

 大河の事務所に連絡するわけには行かない。

 これ以上頼れない。

 タクシーは?

 ・・・・知らない人と密室に閉じ込められるなんて考えるだけでも嫌だ。

 やはり電車が一番早いし、現実的か。

 時計を見ればもう10時過ぎ。

 この時間にあのストーカーと出くわすとは思えない。
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