ルージュのキスは恋の始まり
「俺はあんたにとっては捨て駒だろう?古い縁を切りたくて仕方がないのに自分の手が汚れるのを恐れてる。だから俺を使う。それとも、もうあんたにはその力もないのか?」

 じじいの反応を見ながら俺は側近が言えない言葉を口にする。

「さあて、どうかな?」

 じじいが俺の顔をじっと見据える。

「玲王!」

 片岡が止めに入るが俺は止める気がなかった。

「図星だとしたら、早く隠居したらどうだ」

「面と向かってわしにそんな事を言うのはお前くらいだ。まあ、せいぜい頑張れ」

「1つ聞いていいか?」

「何だ?」

「前社長が辞任した理由」

「・・・・マスコミには伏せているが辞任じゃない。自殺だ。会社の金を横領していたが、精神的に追い詰められたらしい」

 片岡に聞かれたくないのか、じじいが俺に耳打ちする。
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