ルージュのキスは恋の始まり
「きな臭い話だな」

「彬が裏で動いていたという話もある。奴はこの会社を手中に収めたがっていたからな」

 彬・・・か。

 奴の事を調べれば調べるほどグレーどころか真っ黒だ。

 15も年上の従兄は、今では龍神グループのナンバー2。

 裏ではやくざと繋がっているという噂もある。

「あんたも護衛をつけずに出歩くな。死にたくなければ・・な」

 日本に戻って来て感じた。

 じじいの求心力が弱まってる。

「・・・・」

 俺の言葉にじじいが黙り込んだ。

 別れの挨拶も交わさずにじじいと片岡を残してエレベーターに乗ると、俺はまっすぐ社長室に向かう。

 俺の腕の中の女はまだ眠ったままだ。

 社長室に入るとソファに彼女を寝かせ、着ていたスーツのジャケットを脱いで彼女にかけた。
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