ルージュのキスは恋の始まり
 だが、キスの証拠は残らない。

 男にとってはいい商品だ。

 ニヤリとしていると、ノックの音がした。

「入れ」

 俺が返事をすると、宣伝部の女部長が入って来た。

 名前は確か田辺とか言ったか。

 化粧は完璧、香水の匂いが若干臭いのが気になるが、会社の顔としては及第点だろう。

「あの・・・・その女性は?」

 田辺がソファで寝ている橘を見て目を丸くする。

「お前も話は聞いているだろう?今日からお前のところに異動になった橘美優だ」

 俺が紹介すると、何が気に入らないのか田辺は目を細め、見下すような視線で彼女を見た。

 これだから女ってのはめんどくさい。

 男以上に扱いが厄介だ。
< 66 / 391 >

この作品をシェア

pagetop