ルージュのキスは恋の始まり
「でも、そんなあなたは嫌いじゃないですよ」

 フッと片岡が微笑する。

「ふん、お前に好かれても嬉しくない。気持ち悪いだけだ」

「そういう口の悪さ。あなたの一種の愛情表現ですよね」

「・・・お前の頭もついにイカれたか。病院で診てもらえ」

 俺が不快な顔をして言うと、片岡の携帯が鳴った。

「はい、片岡です」

 俺に構わず片岡が携帯に出る。

 じっと耳を澄まして会話を聞いていると、どうやらじじいが会合の帰りに交通事故に遭ったらしい。

 ただの事故か。

 それとも、誰かの陰謀か。

 いずれにしても、俺にとっては厳しい向かい風だ。

 じじいが表に出てこれないとあっては、好き勝手する輩が出てくる。

「玲王、聞こえていたと思いますが、会長が事故に遭われて病院に搬送されたそうです。病院に向かいますか?」
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