ルージュのキスは恋の始まり
「俺が行っても邪魔なだけだろ?」

 俺は冷めた表情で言うが、片岡は引き下がらない。

「ですが・・・・」

「じじいだって望まないさ。それに・・・・」

「それに何ですか?」

「あのじじいは殺したって死なない」

 図太さだけは天下一品だからな。

「ひょっとして彬さんの仕業でしょうか?」

「どうだろうな?短絡的に決めつけるのは俺は好きじゃない。それより、お前の親父は無事だったのか?同乗してたんだろ?」

「かけてきたのが本人ですから多分大丈夫だと思います」

 片岡にしては珍しく曖昧だ。

「秘書がわざわざ自分は無事だなんて言うかよ。自分の父親なら確認しておけよ」

「では、自分の祖父なら自分の目で確認したらどうですか?」
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