ルージュのキスは恋の始まり
「え?」

「何でもない。でも、お前は警戒心強そうに見えて、意外と無防備なんだよな。今のキス、何で逃げなかった?」

「・・・・」

「答え、欲しくないか?俺は欲しいけど」

 悪魔が私の耳元で甘く誘う。

 答え?

 答えを知ってどうなるの?

 ただ傷つくだけじゃない。

 私の瞳が暗く陰るのを見て、龍神社長は軽く溜め息をついた。

「やっぱり臆病者だな。お前にこれやる」

 そう言って、俺様社長は無造作に私に口紅を手渡す。

 これはさっき私に使ったやつ。

「これが今年の秋の新作の完成品だ」

「え?でも・・・・」

 容器のデザインが当初の予定のものと違う。
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