君だけのパティスリー
いつだったかのクリスマスと同じ、それは立派なブッシュドノエルには申し訳ないようなお返しだけれど、今の精一杯の気持ちと素直になれない気持ちが混ざり合った末のお返しでもあった。

本当は、今年はちゃんとしたお返しを用意してあった。
でも「ちょっといつもの公園まで来て!」とあの時と同じ誘いを受けたとき、恥ずかしさが先に立って、選んだプレゼントは机の上に置きっぱなしで来てしまったのだ。


「うわー、なんだろう」


嬉しそうに差し出されたふゆ樹の両手の上に、ななは手を開いて中の物を落とす。
コロンと手の平に転がったのは、水玉の包装紙に包まれた大きな飴玉が二つ。

手袋もマフラーもつけていないふゆ樹は、鼻の頭と指先が真っ赤に染まってしまっていて、その寒そうな様子を見て、自然とななの手が伸びた。


「手袋くらいしてくれば良かったのに」

「へへっ、ほんとだね」


嬉しそうに笑ったふゆ樹の手を、手袋で温もった両手でそっと包み込む。


「なーちゃんの手、あったかいね」


包み込んだふゆ樹の手は凍えそうな程に冷たくて、でもその顔に浮かんだ笑顔は春のひだまりのように温かくて、ふっと頬が緩むと開いたななの口から自然と言葉が零れ落ちた。


「私の好きな大玉あめ、今年は特別に二つあげる。メリークリスマス、ふーくん」

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