いつだってそこには君がいた。



いつか言えるかな……この気持ち。
溢れ出てしょうがない恋心。



「ついたね〜!」



沙月ちゃんが叫ぶ。
お祭り会場である大きな公園は駅から目と鼻の先にあった。
たくさんのお店が公園を囲むように立ち並んでいて、賑わっている。


美味しそうな焼き鳥の匂い。
子どもたちがくじ引きの前ではしゃぐ声。
女の子たちの色とりどりの浴衣姿。
お祭りの雰囲気に心が踊る。



「なにか食べよう」


「俺じゃがバター食べたい」


「いいね!」



結城くん、高橋くん、沙月ちゃんの順番に喋る。
3人が歩き出して私もついて行こうとした時、目の前に小さな幼稚園児ぐらいの男の子が飛び出して来て急ブレーキ。



「わっ、ごめんね。大丈夫?」

「大丈夫だよ」



声をかけると男の子はそのまま真っ直ぐに走り去って行った。
ママらしき女性に「心配したじゃない」と怒られている声が聞こえて微笑ましくなる。
そして、ぶつからなくてよかったと胸に手をそえて安堵していたところに「おい」と肩に手を置いたのは……。



「結城くん」



彼だった。



「迷子になるだろ、絶対」


「な、ならないよ」


「ゆりりんトロいから心配になる」



そりゃ鈍臭いのは否定しないけど。

なんて思っていると、目の前に差し出された結城くんの手を凝視する。なんだろう、この手は。



「手でも繋いどく?」


「……えっ」



突拍子もない発言に思わずそんな意味もない言葉を漏らした。


これは……からかわれて、る?

よね?


一瞬だけ沙月ちゃんの顔が頭に浮かんでココロがモヤッとした。



「はは、冗談だよ。行こう」


「う、うん……」


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