いつだってそこには君がいた。
だけどなにか出来ることがないかって、そう思うんだよ。
大好きな君に苦しんでほしくない。
「なあ、日高、そんな顔すんなって」
「……っ……」
高橋くんの手が肩に置かれた。
まだ熱があるのか、体温が高い気がする。
制服越しに君の温度が流れ込んで来るみたい。
「俺、絶対負けない。受験なんか、さっさと終わらせて同じ学校で高校生になろう」
優しい眼差しと、穏やかな声。
まだ灼熱の太陽が空の上で輝いていた季節、弱音を吐いていた君の面影はもうない。
乗り越えられたのかな、高橋くん。
いや、たぶんそうじゃない。
これは私の憶測だけれど、負けそうな自分を鼓舞するように、負けないと、頑張るんだとそう言い聞かせているんだ。
「うん、まだまだ頑張ろう、みんなで一緒に!」
頑張り続けよう。心折れている暇は、私たちにはない。
暗くなって落ち込む時間があるのなら、明日頑張れるために笑いたい。
大好きなみんながいるからそう思える。
高橋くんも、そうだといい。
みんながいるから、烏滸がましいけれど、私がいるから、頑張れるのだと、そう思っていてほしい。
上手な言葉が浮かばなくても、そばにいるだけで支え合える仲間に出会えたこと、私の人生の宝のように感じる。
ありがとう、本当に。
「お待たせー。おばちゃんからジュースも貰って来たよー」
タイミングを見計らったようにふたりがジュースとスプーンを持って部屋に帰って来た。
高橋くんのご家族の分とそれから私たちの人数分買ってきたプリンは、みんなで笑いながら食べた。
受験で気が滅入っていたのに、幸せだなと心から思えた。