いつだってそこには君がいた。


その目線を受け止めたまましばらくは我慢できていたのだけど、それも限界に来て息を吐き出すように盛大に笑う。お腹まで痛くなってきた。



「ばかやろう」

「ごめんごめん、ほんと……っ」



頭を軽く小突かれて、避けるように上体を屈ませる。


ああ本当に、もう、こんなに楽しくて幸せでいいのだろうか。


充実した空気に纏われて、私は声をあげて笑う。
心の扉を全開にして遠慮なんて欠けらもなく、楽しいから楽しいと感じるだけ自分をさらけ出すように。



「日高の笑いのツボわかんねぇ」

「ふふふ、……高橋くんだよ」

「は?」

「私の笑いのツボ、高橋くんだよ」



本当だよ。
私、高橋くんがいるからこんなにもいつも笑っているんだよ。


高橋くんは数瞬だけ固まると「そ、そうなの?」と少し照れたようにうわついた声を出した。


優しくて人気者だけど飾らずにいて、みんなのことを、私を、楽しませる高橋くんがいつも、いつだって私の心の奥の琴線に触れるの。


だから高橋くんが私の笑いのツボ。


これは言えないけれど、その度に好きだなあって思うんだよ。



「そろそろ帰ろうか」



色違いのお守りを購入し終えると、高橋くんのお母さんに促されてその場を去ることにした。


来た道を辿り、車に乗り込んだ。
その帰りの車中も行きの時同様に騒がしくしていると、高橋くんのお母さんに「あんたら青春しすぎ」と言われた。


"青春"。


あまりに眩しいその響きに胸が高鳴るのを感じた。
ずっと無縁だと思っていた青春。
私は今、もしかしてその真っ只中にいるのだろうか。


もしか……しなくても、みんなのお陰で?



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