いつだってそこには君がいた。
後頭部を手でさすりながら笑う高橋くんに向かって私も笑う。
だけど、私も、かな。
静かだった心臓が高橋くんの登場で慌ただしくなって来たかもしれない。
「私は高橋くんの落ち着かないのが移っちゃったよ」
「え!?それはごめん!!」
「いいよ、しょうがないから、許してあげる」
お茶目に笑ってみせると、高橋くんが「そろそろ行くかっ」と歩き出すので私も倣って横に並んだ。
歩き出すと、かばんにつけているお守りが揺れて、それについている鈴が小さく鳴った。
ドキドキはするけれど、不安は相変わらず心にはなかった。
***
「あー、受かってんかなぁ」
「もう終わったんだし、今更なに言っても結果変わんないからさ、受験の話すんのやめてくんない?気が滅入るんだけど」
受験日から一週間が経った。
教卓を囲むように私たち四人は話し込んでいた。
不安げな声をあげた高橋くんに沙月ちゃんが辛辣な言葉をなげかけた。
それを私は苦笑しながら見守る。
時の流れは本当に早いもので、明日はとうとう卒業式だ。
早かった一年が、楽しかった一年が、もう終わろうとしている。
寂しいような、悲しいような。
合格発表がまだなだけに、この三人と離れることにならないかだけがすごく心配だ。
「それより明日の卒業パーティーちゃんと予約取れてんの?愛希お前が幹事だろ?」
結城くんが頬杖をついてめんどくさそうにそう言った。
「それはばっちし!ちゃんとカラオケの大部屋おさえといたから」
「他のクラスもカラオケ狙ってたみたいだから、良かったじゃん。ね、優梨ちゃん」
「うんっ!」