いつだってそこには君がいた。
頷くと沙月ちゃんと目を合わせて笑った。
受験からようやく解放された私たち、中学三年生。教室中の空気が軽く、穏やかでみんなも笑っているようだった。
「ねえねえ明日の卒業式さぁ」
「うん」
「やっぱり欲しいよね、第二ボタン!」
「えっ」
沙月ちゃんとふたりでお手洗いに行ったあと、水道で手を洗っていた。
言葉を詰まらせたまま口をもごもご動かしているうちに、顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。
「愛希から貰いなよ」
「そん、なの……いいの、かな?」
ハンカチで濡れた手を拭いながら、沙月ちゃんに問う。
そりゃもちろん欲しいのだけど、私なんかが貰ってしまってもいいの?
他にも高橋くんの第二ボタン、欲しがってる人いるかもしれない。
「他の人に取られてもいいの?」
「っ、それは、ダメ!」
「でしょ?私も頑張るから、優梨ちゃんも頑張ろ?」
「……っ……」
唇を巻き込みながら噛む。そして俯くと、小さく頷いた。
くれ、るかな……高橋くん。
第二ボタンくださいって言ったら、どんな顔するかな。
好きなのバレちゃう、かな。
バレたら、嫌だなぁ。
だって高橋くんは私のこと、なんとも思ってないだろうし。そばに、いづらくなる。
でも言わないと誰かに貰われて私、きっと落ち込んじゃうんだろうな。
想像出来すぎて、辛いや。