いつだってそこには君がいた。
「ゆりりんは笑顔が似合うよ」
「ふふふ、ありがと、結城くん」
「いいえ」
「冗談ってわかってても嬉しいよ」
ふっと息を漏らして彼の口元が憂いを含んですこし緩む。前髪が彼の目元に影を落とした。
「冗談、か」
「結城、くん……?」
「そうじゃないって言ったらさ、ゆりりんどうする?」
心がざわついた。勢いのある風が、私の身体を突き抜けていった感覚がした。きっと今私、変な顔しているに違いない。
三秒後ぐらいだった。結城くんが可笑しそうに息を思いきり吹き出して「やっぱゆりりんからかうの面白いわ」とお腹を抱えて笑った。
椅子に触ったまま、足をバタバタ動かして身悶えている。
「も、もうっ……やめてよっ」
「ごめんごめん」
一頻り笑い終えると、結城くんの手が伸びてくる。
私は目を瞑るとその手のひらが頭に置かれる感触を瞼の裏を見ながら感じた。
一度だけ髪の上をすべる。
そして彼の手がどこかへいき、恐る恐る目を開けると結城くんと目が合った。
時々結城くんがわからない。なにを考えているのか、どうして私に「可愛い」とか平気で言ったり、頭を撫でてくるのか。
その度に不安になって、胸が痛くなる。
不器用にしか笑えなくなる。
***
卒業式のリハーサルを終えて、中学生最後の放課後になった。
みんなが各々話し込んでいるなかで、私たち四人もなかなか教室を後にすることがてきずにいた。