いつだってそこには君がいた。


「学校は好きじゃないけど、通うのも最後って思うとなかなか帰れないね」



沙月ちゃんの言ってるいることがすごくよくわかるから、私も同意を込めて深く頷いた。


教室全体を目線でなぞっていく。
一年前、ここに足を踏み入れる時はこんな楽しい一年が過ごせるなんて思いもしなかった。


不安でしょうがなくて、勉強に逃げようとそう決めていた。


勉強は頑張ったけれど、それは逃げの手段としてではなく、友だちとの目標の過程だった。


みんなの前で発言することがトラウマになりかけていた私。自己紹介の時、スムーズに言葉が出てこなくて泣きそうになって、高橋くんが助けてくれた。


好きな人にすこしでも可愛いって思ってもらいたくて、身だしなみについても改善することができた。


これは比喩とか大袈裟に現実を盛っているわけじゃなく、本当の本当に宝物みたいな一年だった。



「私」



口を開くと三人が私に目線をくれた。



「ここに転校してきて、良かった」



心からの言葉に、私は笑う。そしてみんなも笑ってくれた。
友だちって存在が私を変えてくれた。


間違いなく一年前な私と、今の私は全然違う顔をしている。


それは眼鏡をつけているとか髪の毛を結んでいるとか、そんなことではなく。


……変われた気がするんだ。


授業での発表も、全然怖くなくなった。
憂鬱な気分にはなるし苦手なのは違いないけれど、もうみんなが私の発言でどう思うかとか深く考えなくなった。


温かいクラスメイトの雰囲気に、私も自然体でいられたから、できたこと。


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