いつだってそこには君がいた。
「そろそろ帰るか」
「そうだな」
高橋くんと結城くんが続けて言う。
クラスメイトたちに「俺らもう帰るから。また明日な〜!」と、高橋くんが叫ぶ。
それにみんなが「おう!」「またね〜」「明日が最後かよー」と多種多様に答える。
私もみんなに挨拶をしながら廊下へ出た。
窓の外にある桜は蕾をつけて開花の時期を静かに待っている。
「四月からも、こうやってみんなで帰れるといいな」
高橋くんが靴に足を入れながら誰に言うわけでもなさそうに呟いた。
なので私も踵の部分を手で整えながら「そうだね」と囁く。
家が近いから、合格していたらきっとずっと一緒に帰れる。
私たちの桜の花も、咲くといい。
校舎を出て目の前を沙月ちゃんと結城くんが並んで歩く。
そうなると自然に私の隣に並ぶのは高橋くんだ。
「なあ、日高」
「ん?」
「明日、卒業式終わったら俺に時間くれないか?」
「え?」
気の抜けた言葉が喉から飛び出た。
卒業式が終わったら……?
「体育館裏ならふたりきりになれっかな」
空を見上げる高橋くんの横顔を見つめた。いや、目が引っ付いたように離せない。
先程から言葉の意味はわかるのだけど、うまく飲み込めない。
心臓の鼓動が耳もとでうるさく響く。
「ど、どうかな……」
「んまあ、無理やりにでもふたりきりにするから、よろしく」