いつだってそこには君がいた。



豪快に笑う高橋くんの表情を見て目を見開いたあと、やっとの思いで頭を縦に動かすことができた。


ああ、どうしよう、今日の夜はドキドキして眠れそうにないや……。



***



案の定、深く眠ることができなかった。
目を閉じていても、高橋くんの声が頭の中で何度も響いては現実に引き戻した。


制服に袖を通して洗面所で顔を洗った。
コンタクトをつけて髪の毛をドライヤーでブローするとリビングに向かう。


父と母が準備してくれた朝食をたいらげて玄関に行った。



「今日の卒業式行くから」

「うん」

「気をつけてね」

「うん、行って来ます」



母に見送られて家を出る。歩きなれた通学路を進む。
風が優しく顔を撫でた。


卒業式のあと……高橋くんの用事って一体なんなのだろう。


ふたりきりになりたいらしいけど、よくわからない。


考えてしまうとドキドキしてきて苦しくなるから考えないようにしているのだけど、どうしても頭から消えない。


……第二ボタンのこと、その時言えるだろうか。

くださいって、言ってもいいのかな。



「おはよ〜」



下駄箱のところでクラスメイトたちと挨拶を交わし、上靴に履き替える。


校舎内が卒業式を祝福するように折り紙やボンボンでできた花などで飾り付けされている。


昨日私たち三年生が帰る時にはなかったものだ。下級生が私たちのためにやったのだろうか。


部活に所属していなかったから仲のいい後輩などいなかったが、他の人たちは違うよね。


人と人の繋がりって、凄いなぁ。



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