いつだってそこには君がいた。
ふとその時、肩にかけていたかばんに負荷がかかるのを感じて後ろを振り返ると沙月ちゃんがいた。
「おはよう、優梨ちゃん!」
「沙月ちゃんっ、おはよ〜〜!」
テンションが上がって高い声が出る。
両手を沙月ちゃんの手のひらと何度も音を鳴らして合わせた。
そうしていると「なにやってんだよ」と低い声が聞こえて、後ろにそう言った結城くんと高橋くんがいることに気がついた。
高橋くんと目が合って反射的にときめく胸。
咄嗟にそらすと、沙月ちゃんの隣に並んで教室を目指した。
……ああ、最近は高橋くんと目を合わすのも、話すのも慣れてきていたのに、一晩中高橋くんのことを考えていたからか恥ずかしい。
「優梨ちゃん、今日のミッションわかってる?」
「うん、第二ボタンだよね?」
「そうそう。いい報告待ってるから、頑張ろうね」
沙月ちゃんに昨日、高橋くんから呼び出されたこと報告したいのだけど、すぐ後ろにふたりがいて、それはできそうにない。
相談したかったのだけれど、しょうがないか。
「おはよー」
「おはよ」
教室に着くと、机の上には卒業生の証として胸元につける花が置いてあった。
色んな気持ちを胸に抱えているけれど、とうとう今日ここを卒業する。この事実に変わりはないし、嬉しいような、切ないような、なんとも言えないものが心の中で渦巻いている。