いつだってそこには君がいた。


隣のクラスもホームルームを終えた様子で、騒ついていた。
廊下を進んでいくとだんだんそれらの音が遠ざかっていく。
歩む足がスピードを上げた。


渡り廊下を進み、先ほどまで式を行っていた体育館の入り口はスルーして、裏側へまわる。


角を曲がる前に立ち止まって、最高にうるさくなった心臓を落ち着かせようと試みるけれど、時間が無駄に過ぎるだけでなにも変わらない。


壁に手をつけて、高橋くんがいるであろう体育館裏の方を見る。



「……っ……」



……いる。


壁に寄りかかってポケットに手を突っ込んで立っている姿は、遠目から見て控えめに言っても格好いい。


物思いに空を見上げてぼうっとしている様子。


しばらくその姿を見ていて、そろそろ行かなきゃと目をつぶって決意を固めていると「日高?」と私を呼ぶ声が聞こえた。


目を開ける。高橋くんが私に向かって手をあげた。
私は一歩一歩を踏みしめながら彼に近づいて行く。



「案外うまくふたりきりになれたな」

「そうだね」

「座んね?」



裏口の階段にふたりで腰かけた。
学校を区切る目の前のフェンス。それ越しに見る空が青い。
雀の囀りがどこからか聞こえ、平和な時の流れを感じる。


となりにいる高橋くんも同じように上を向いていた。

どれぐらいそうしていたのか、ようやく彼が口を開いた。



「一年、あっという間だったなぁ」

「そう、だね」



意図せず言葉が詰まった。

今日ここに呼び出された用件が気になりすぎて、のどが締めつけられる。



「あのさ、日高」


「うん?」


「俺、日高がそばにいてくれたから、この一年頑張ってこれた」


「え?」


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