いつだってそこには君がいた。
欲しいって自分から言おうと思っていた。
だけどそれを彼から貰えるなんて、夢を見ているように幸せだ。
きっと、この第二ボタンの本当に意味に高橋くんは気づいていない。たぶん知らないのだと思う。
女の子から第二ボタンが欲しいって言うことは、告白しているも同然。
それを男子から女子にあげることも、きっと然り。
だけど高橋くんは本気で感謝の気持ちを伝えるだけのために、これを差し出した。
下心なんてまるでない。それはわかる。それでも私は涙が滲むほど嬉しい。
今はこれだけで充分だ。充分すぎる。
好きだから当然自分のことも好きになってもらえたらそれは至極幸せなことだと思う。
だけど今は、今だけは、これだけで物凄く幸せなのだ。
この第二ボタンは、私の宝物。
「みんなのところに戻るか」
「うんっ!」
泣きそうになるのを堪え、明るく返事をすると立ち上がった。
そしてふたり肩を並べて歩き出した。
***
それから一週間後、今日は公立高校の合格発表の日。私たち四人は駅前で待ち合わせをしていた。
先に到着していた沙月ちゃんと合流した。
となりで盛大にため息を吐く沙月ちゃんに「大丈夫?」と声をかけた。
「優梨ちゃんは無事に第二ボタン手に入れたのに、私は空斗になにも言えなかった……」
「落ち込まないで?幼なじみだから言いづらかったんでしょ?」
「そうだけどぉー。私から言いだしておいてあんなに自分が意気地なしだとは思わなかった」
足元に転がっていた石ころをつま先で弄ぶ彼女に苦笑する。