いつだってそこには君がいた。
体勢を整えながら頬を膨らませると「優しさは素直に受け取れよ」と言われて俯いた。
素直に受け取れって言われても……そんなの難しいに決まっている。
だって結城くんは友だちだけど、友だちの好きな人なんだもの。
だけど最近は私が不甲斐ないばかりに、結城くんに頼りきりで……ダメだなぁ、本当。
……高橋くんに会いたい。会って話して、高橋くんの笑顔に癒されたい。
「じゃあ各自担当区よろしくね」
指導担当の先生の言葉を皮切りに、清掃がスタートした。
一年生は校門前の道から校門をすこし行ったところにあるトイレまでの場所を担当している。
作業をしていくと、だんだんと登校してくる人たちが増えていき、校門前が賑わっていく。
額に溜まった汗を、手首あたりで拭う。
春の陽気な太陽が力を発揮しているようだ。これからは暑くなっていく一方なのだと思うとそれだけで体力を削がれた気がした。
「ゆりりん、葉っぱついてるよ」
「え?」
スカート後方の裾についていた緑色の落ち葉を結城くんが取ってくれる。あまりに自然な流れだったけど、スカートの裾に触れられたことを考えると急に恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
そういうことをさらりとやってのける彼はやはりモテる男だ。こんなにもドギマギしている私のことなんて知らん顔でいる。
パーソナルスペースを阻害されたような感覚で、あまり気分はよろしくない。ただただ羞恥心を煽られる。
「日高、おはよう!」
「ふたりとも頑張ってるねぇ〜」
後ろを振り返ると登校して来た高橋くんと沙月ちゃんがこちらに近寄ってきている最中だった。
私は赤くなっているであろう顔を必死に笑顔にさせる。