いつだってそこには君がいた。


今朝教室で雪菜ちゃんと話したことをなんとなく思い出す。



ーー「最近田中、優梨ちゃんによく話しかけてくるよね?」

ーー「鈍感?」



違うの。本当はなんとなくわかっている。
けれど"どうして私なんかを"って考えると、肯定するのがとても怖い。


田中くんからの好意を認めるのが怖い。


私は私に自信がない。ずっと友だちすらいなかったこの私が、私を、誰かに好きになってもらえるなんて……とても信じられない。


好き、なの? 田中くんは私のことが……。

どこが? 一体どこに惹かれてくれたの?


私が高橋くんを想うぐらい、田中くんは私を好きでいてくれている……?


こういった思考を巡らせることすら自惚れすぎているのではないかと不安になる。


誰かに頭の中を覗かれでもしたら即倒してしまうんじゃなかろうかとさえ思ってしまう。そんなこと絶対起こらないけれど。



「ごめん、お待たせ……!」


「高橋くん……っ」


「悪りぃ悪りぃ、担任に捕まっちまって色々雑用させられてた!」



走って来たのか軽くではあるが、肩で息をしながら詫びるように手を合わせて教室内に入ってくる。


私はうまく高橋くんの顔を見れずに「そんなに待ってないよ」とフォローを入れた。



「日高の教室ん中初めて入るわ」


「そうだね……」


「席そこ?」


「うん」



私の座る席を指さして笑い、高橋くんが私の右隣に座る。
その一連の動作を見ていた私に向かって彼が「日高の隣の席」と愛らしい顔で言うものだから思わず面食らった。


突然なにを言いだすんだ、この人は……。


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