いつだってそこには君がいた。
顔を下に向けて、笑いそうになるのをくっと堪える。
放課後の教室にふたりきり。窓からは艶やかな夕陽が照りつけている。
グラウンドから聞こえる声、校舎内から聞こえる吹奏楽部の金管楽器の弾けるような音。
「中三のときずっと日高の隣の席になりたかったんだよね、俺」
「なんで?」
「勉強教えてもらえるじゃん」
なんだ、そういうことか。
もっと特別な理由があるのかと思った。
……なんてまた自惚れたことを考えてしまった。
「勉強なら今からするでしょ」
「うん、よろしく」
「図書室行こう」
「おっけい」
了承を得てかばんを持つと教室を高橋くんと出た。二階にある図書室に向かって階段を下る。
高橋くん、背高くなったな……。
彼の後ろ姿を見ながら想いを馳せる。
身長差かなりあるかもしれない。ついこの前までそんなこと思わなかったのに、この年代の男の子の成長期は侮れないな。
「ん、日高どうかした?」
「いや、身長伸びたなぁと思って」
振り返ってくるとは思っておらず、声がうわずってしまった。
「そういや入学してすぐにやった身体検査で中三のときより身長五センチは伸びてたなぁ」
「五センチも!?」
驚いて声を張り上げる。
へへんとドヤ顔をする高橋くんに目を見開いてリアクションした。
高くなったとは確かに思ったけれど、そんなに伸びているなんて予想外だった。
「日高は小さいもんなぁ」
「そんなことないもん」
そう言った私の目の前まで高橋くんが無言で歩み寄る。目と鼻の先に高橋くんの胸があって、心臓がドクンと跳ねた。