いつだってそこには君がいた。


結城くんが私から離れて、距離ができる。流れる不穏な空気に、言葉が見つからない。四人ともが黙ったままでいる。


沙月ちゃんの大きな瞳から大粒の涙が一雫流れるのが見えて、胸が軋んだ。
空からまるで絶望が降ってきたみたいだった。


踵を返して沙月ちゃんが走って行く。
それを私は見ているだけで精一杯。追いかけたのは、高橋くんだった。


私も結城くんも、動けなかった。



***



結城くんが先に帰れと言うので、私は言われた通りひとりで家に帰った。
その道中、私はなにも考えることができず、無心で身体を動かし、家路についた。


自室にて脱いだ制服をハンガーにかけて着替えると、ベッドの上に寝転がった。無意味に天井一点に視線を投じる。


なんだろう、この虚しい気持ち。
すべてを失ったかのような寂しさ。


失って、しまったのかな……。


大切なものすべて。


沙月ちゃんのことを傷つけてしまった。


今日起きたことは、ずっと恐れていた展開だった。


結城くんの気持ちに目を塞いできた。時間が経てば、いつか結城くんの気持ちが沙月ちゃんの方へ行ってくれる。そう言い聞かせていた。


でも、そんなわけない。他人の心を操れるわけじゃないのだから。誰もが知る常識なのに。


ああ、もう……。


昨日と今日で色々ありすぎて、心の疲労が半端じゃない。とても重たい。


目の前の景色が滲む。涙がじわじわと溜まっていく。まばたきをしたらそのまま重力に逆らうことなく滴り落ちて、一度落ちてしまえばそこを止め処なく流れていく。


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