いつだってそこには君がいた。


泣く資格が私にあるのかな。
みんなのことを悲しませてばかりいる私に。


瞼が重い。目を閉じても、涙が隙間から出てくる。胸もズキズキ痛い。


くっと唇を噛んでやり過ごしているうちに、私は意識を手放して眠っていた。


再び意識を取り戻したのは、それから二時間後のことだった。
目元を手でこすりながら起き上がると、喉の渇きに気づいてリビングに向かった。



「……引っ越すなんて言ったらあの子きっと悲しむわ」



リビングへの入り口である扉のドアノブに手をかけた瞬間に聞こえて来た言葉に身体が硬直する。


ここからお父さんのお母さんが食卓で面と向かって話し合っている姿が見える。


嘘、でしょ……?まさか、転勤……?


スッと気が遠くなる気がした。


今日はなにもかもがタイミング悪いな……。


そのままリビングの扉から手を離すと、部屋に戻って財布を手に家をそっと出た。


暗い夜道を歩く。アスファルトに入った亀裂を目で追いながら、重い足取りで進む。


街灯が連なる公道。数分ほどで目的地のコンビニまでたどり着くことができた。


そしてそこで鉢合わせた人物に目を見開かせる。



「日高……」


「高橋くん」



白地のTシャツにジャージを着た高橋くんが袋を片手にコンビニから出て来たのだった。
ぐっと喉もとに痛みを感じる。


一瞬で泣きそうになっている自分に、自分で驚きを隠せない。


どれぐらいふたりで立ち尽くしていたのか、本当は五秒とかそんぐらいだったのかもしれない。だけど私にはすごく長く感じられた。


目を高橋くんからそらせない。
それでも強張っていた彼の口もとが緩むのが見えて、ようやく息を吸えた。



「ちょっと話さねえ?」


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