いつだってそこには君がいた。
目尻が下がり、声の色も穏やか。私はたどたどしくも頷いた。
「その前に……」
「ん?」
「飲み物だけ買ってもいいかな」
「ああ、もちろん」
ごめんと詫びて、コンビニに入るとミルクティーを手にレジに向かってさっさとお会計を済ませてしまう。
店員の間延びした「ありがとうございました」に見送られて外に出る。クーラーの効きすぎた店内から一歩外に出ると、外気のぬるさを肌が感じとる。
ポケットに手を突っ込んで立って待ってくれていた高橋くんに駆け寄ると「行くか」と歩き出した。会話はない。
しばらく高橋くんについて行くと到着した場所に驚く。
だってそこは私たちがついこの間まで通っていた中学校だった。
門の鉄格子を掴んで登る高橋くんに「い、いいの!?」と声をかけた。
「バレなきゃ大丈夫っしょ」
そうなのか。いや、そんなわけない。
勝手に忍び込んだことが知られたら、きっと怒られるに違いない。
色々思考を巡らせているうちに高橋くんはあっという間に門の上に登って「ほら、日高も」と手を差し伸べてきた。
私は一瞬だけ躊躇して、高橋くんの手を握った。
身体をすごい力で引き寄せられて、私も高橋くんも無事に門を飛び越えることに成功した。
……ああ、私なにやってるんだろう。
もうどうにでもなれと、ぐんぐんなんの迷いもなく進む高橋くんについて行った。
昇降口の取っ手を握ると鍵がかかっておらず、すんなり侵入することができた。
「不用心だなぁ」
高橋くんの呟きに「そうだね」と返す。
時刻は午後八時をすこし過ぎたところ。夜の学校はやはり雰囲気をがらりと変えるみたいだ。すこし寂しい雰囲気を醸し出している。
そして私たちは三年生の時に毎日通っていた教室へと向かった。