いつだってそこには君がいた。
こんな最低なことを考えてしまう自分に嫌気がさす。
「大丈夫だよ、日高は優しいよ」
「優しく、なんかない……っ」
「俺、やっぱり日高みたいになりたい」
なんで、どうしてそう思うの……?
「俺は頑張り屋の日高に勇気もらってる。いっつも周りの人のことばかり考えてて偉いと思うよ?」
泣きじゃくる私の頭のてっぺんをその大きな手で優しく撫でる。
「偉い、偉い」
何度も何度も往復する手。温かさが伝わってくる。そしてそれは心まで染みて、癒しに変化した。
痛む心にほんのすこしの温かさ。君の、特効薬。
「俺はなにがあっても日高の味方だ。それで沙月の味方でもある」
「……結城くんは?」
「あいつは……抜け駆けしたけど、うーん、まあ味方かな?」
「……どういうこと?」
「秘密」
不敵に笑ってみせた高橋くんに笑う。高橋くんの指先が私の目元から頬にかけて優しく触れ、涙を拭いとった。
「大丈夫、明日からも俺たちは仲良しだ。俺が保証する」
自信たっぷりに言い切った高橋くん。
私は目を見開いて細めると、笑って大きく頷いた。
君が大丈夫って言うなら、きっと大丈夫。
私は君を信じてる。
***
帰宅した。家の前まで高橋くんに送り届けてもらった。道中ふたりの間に特別な会話はなかったのだけれど、全然違和感はしなかった。
むしろ無言が心地いい関係であることにすこし喜びを感じていた。
そしてベッドに横たわりながら、私が口走ってしまったことについて考える。
時計の針の音がやけに大きく聞こえる。
私、高橋くんに好きって言っちゃった……。
言っちゃったんだ……。