いつだってそこには君がいた。
自分の頭にある発想を振り切るように、一心不乱に数式をノートに書き殴る。
後ろにやっていた髪の毛が前に落ちてきて耳にかける。
今までずっと結んでいたから、知らなかった苦労。
ふとその時、じいっと高橋くんに見つめられていることに気がついた。
「なに?」
「いや、日高の髪の毛サラサラだなぁって」
「そ、そうかな?」
「うん、とても」
あまりに真剣な顔で言うもんだから、脇腹を刺激されたようにこそばゆく感じて、我慢しようと思ったのに笑ってしまう。
それにつられるように高橋くんも笑い声をあげた。
「ちょっとぉ、ふたりとも真面目にやってよ!?」
「そーだぞ。愛希だけ違う学校ってことは十分に考えられるんだからな」
「ちょっ、それはマジ勘弁!」
真剣に、でも、時には笑いながら。
ファミレスでのお勉強会は私たちの放課後の恒例行事になった。
***
「さよならー」
一学期が終わり、待ちに待った夏休み。
でも先生たちは「夏休みを制する者が、受験を制する」と口が酸っぱくなるほど言っていて、私たち受験生に発破をかけていた。