いつだってそこには君がいた。



「おーい、こっちこっち!」



今日の全過程が終わって、午後3時をすこし過ぎたところ。


夏期講習が行われている塾の入り口付近。
私と結城くんに手を振る男女ふたり組みの姿を見つけた。



「おつかれー!ふたりとも!」



労いの言葉を明るく言ってくれた沙月ちゃんに駆け寄る。


その横で、対照的にぐったりした様子の高橋くんに気づいて背中にポンと軽く触れた。



「おつかれさま、高橋くん」


「……おう」



高橋くんには似合わない、その下手くそな笑顔。


この間の電話から、高橋くんのことはちょっと心配している。


でも口下手だから、やっぱりうまいことは言ってあげられなくて。


こう、一言。なにか一言。


高橋くんを勇気づけられる言葉が見つかると、いいんだけど。



「今日6時半駅前集合な」



結城くんがスマホを扱いながら放った一言。



「やっと今日だね。花火大会」


「うんっ」



今日は、楽しみにしていた花火大会の日だ。


お母さんに花火大会のことを言ったら微笑んで「新しい浴衣新調しなくちゃ」って言ってくれた。



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