いつだってそこには君がいた。



にひひと笑う高橋くんに「もうっ」と言って、肩のあたりを叩く。



「びっくりしたよ」


「びっくりさせたんだもん」


「心臓止まったらどうするの」


「その時は……まあ、心臓マッサージと人工呼吸?」



それは別の意味で死ぬ思いするかもしれない。
想像するとボッと頭の中が沸騰するように一気に体温が上昇した。


夏なのに、もう、暑すぎる。



「青になったよ、行こう日高」

「うん……っ」



笑顔でそう言って、私を見る。
その仕草がかっこよくて、私は目をそらさずにはいられなかった。


となりに並んで横断歩道を渡るだけで、ドキドキする。


渡り終えて沙月ちゃんと結城くんのところに到着。
立ち止まると結城くんと目が合う。



「ゆりりん浴衣似合ってるね。可愛いよ」

「お母さんが新しく新調してくれたの。ありがとう結城くん」



女の子に「可愛い」だなんてさらっと言えるあたり、結城くんはさすがだ。


きっと高橋くんに言われたらドキッとしちゃうんだろうけど、結城くんに言われるとなぜだかそういう風にはならなかった。不思議。



「私には可愛いって言ってくれなかったのにー」

「お前の浴衣姿は何回も見てるし」

「ああそうですかー」



沙月ちゃんと結城くんの痴話喧嘩にクスクス笑いながら、4人で電車に乗った。
乗客の目的はみんな同じなのか、夕方のこの時間に満員だ。
暑くて、帯も巻かれてあるから息苦しい。


ザワザワしていて、とても雑談して笑っていられる状況じゃない。



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