Love is up to me!【完】





こういう時、なんて言えればいいんだろう。凍った空気を穏やかにする、面白いセリフでも言えたらいいのに。



――同じクラスで、図書局に入っている汐田くんは、穏やかで、優しくて、頭が良くて、控えめで、爽やかで、女の子から人気がある。


出席番号が前後だから、話すのはこれが初めてじゃないけれど、クラスの男子の中では私にとっては話しやすい部類に入る数少ない男子だ。



暫くお互いに固まったままいると、ふと後ろから何かに抱かれる。



「――メーちゃんっ」

「……え」



聞き覚えのある。


私が今日もっとも警戒するべき人の声。



「サクロ……」



恐る恐る振り返り、消え入りそうな声で名前を呼んだ。


や、やばい。見つかった。ばれた。



「どうしたのメーちゃん、今日は俺のこと無視してたくせに」

「……違、」

「寂しくなって、ここまで会いに来てくれちゃった?」



――やだ。知られたくない。


サクロの言う言葉は全部事実で、上手に誤魔化す術を知らない私はパクパクと魚のように口を開け閉じすることしかできない。




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