陽だまりをくれたきみが好き。



「……っ……」



ち……近いよ……。


グッと近づいた距離、触れている手、久しぶりに向けられた視線、聞けた声、言葉。


すべてが嬉しくて、泣きそうだ。


お腹の底から押し寄せるように来る、この強い感情はいったいなんなんだろう……?


トクン、トクン……。


淡く広がる、オモイ。

滲みでる、なにかの香り。


顔が赤くなってて、恥ずかしい。



「なんで、ここに来たんだよ」


「……ネコちゃんが……心配で……」


「バカ野郎。雨降ってんだから真っ直ぐ家に帰れ」


「内田くんだって」


「あ?」


「お、怒らないでください!」


「べつに怒ってねぇーよ!」


「…………」

「…………」



無言になる。

ザアァッと、より一層雨が強くなる。



「なんなんだよ、この状況は」


「知りませんよ……」



口ごたえする私に内田くんが舌打ちをする。


背の高い内田くんが私を見下ろしててあまりの迫力に「うう……」と、うろたえてしまった。


< 144 / 206 >

この作品をシェア

pagetop