陽だまりをくれたきみが好き。
「遅くなってごめん!」
「っ、全然だよ!?全然待ってないよ!?」
まだ待ち合わせ時間前だし、むしろ私が早く来すぎちゃったと言うか……!
顔の前でブンブン手を振る私に「ぷ」と、吹き出したようにお腹を抱える早瀬くん。
「くっははは!やっぱり川口は可愛いな」
「えっ!?」
「可愛いよ」
目に浮かべた涙を人差し指で拭う早瀬くんが私の手をスッと握る。
……ドキン。
手、繋いでくれるんだ……。
男の子っぽい強張った手が大きくて、バスケを頑張っているからかな。かたい。
「どこに行く?」
「水族館のチケットをお母さんからもらったの。そこに行かない?」
「お、いいね。行こうか」
手を引いて歩き出す。
頼りになる背中。となりを歩きたくて少し小走りすると早瀬くんが自然と足をゆるめてくれた。
……こんな小さいことでも、やっぱり嬉しいな。
改札を抜けてちょうど来ていた電車に乗ったらほどよく席が埋まっていて、ひとりぶんしか席が空いていなかった。
「川口座りなよ」
「え、いいよ!」
「いいから座って。ほら」
私の肩に手を置いてエスコートして座らせてくれる早瀬くんの優しさ。
立っている彼を見上げると満足そうに笑って見せた。