陽だまりをくれたきみが好き。



ーーガタンッ、ゴトンッ。



帰りの電車。

行きと違って、人が少なく二人とも座れた。


……手は、繋がなかった。


私と早瀬くんはもう恋人同士じゃないから。


そう思うと寂しいけど「これからは友だちな?」って早瀬くんが言ってくれたから、我慢できる。



「川口もさ」


「ん?」


「俺より大切で好きなヤツがいるだろ?」


「……え?」



早瀬くんの言葉にある人物が頭に浮かぶ。


……そんなわけ、ない。



「そいつのために何かしてあげたいって、思わなかった?」


「…………」


「川口も勇気出して頑張れよ」



勇気……?


心の中に問いかける。


認めて、いいのかな。


この生まれたばかりの淡い、胸の中にある温かいキモチをーー。


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