陽だまりをくれたきみが好き。
小学3年生のアレをきっかけにいじめられるようになったけど、それ以前に私はすごい人見知りだったから、男の子とこんな風に話した記憶はあまりない。
よく、わからないけど。
でも、すごく、緊張して……。
胸が、すごい早さで動いてる。
早瀬くんが挨拶してくれたあととか、いつもこうなる。
胸がドキドキして、手と、心が震える。
怖い……。
人と関わるのは、すごく、怖い。
いじめられたら、どうしよう……。
イヤだよ、イヤだ。
もう、あんな思いはしたくないよ。
「うわ、来たよ」
その悪意ある、女の子たちの話し声に胸がさらにキリキリ痛くなった。
そのぐらいの声のトーンには、すぐ反応してしまう……。
もう無意識にも身体に染み込んでいるんだなって思うと、また胸が苦しくなった。
……悪循環。
そしてクラスメイトたちがザワザワしはじめて気づいた。
……あ。
「笠原さんまた遅刻だよ」
長く巻かれた茶色の髪を揺らして、私の前の席に座ったのは笠原玲香(かさはられいか)さん。
なんの雑誌か、私はよく知らないんだけど、読者モデルをしているクラスの女の子。
手足が細くて白くて、目もぱっちりしてて、お人形さんみたいに本当に可愛いの。
……みんなが羨ましくて文句を言いたくなるぐらいに、可愛いの。